へむ丸ブログ

~建築に響く笛~

地下室マンションの平均地盤面_確認の取消し

実際に確認済証の取り消し処分がなされた案件について、記載していきます。

建設地は、東京都世田谷区、2005年10月17日付けで確認済証交付された共同住宅です。

建設地が隣地より地盤のレベルが高く、隣地側に土留め擁壁が設けられていました。

建設地内に地階のドライエリアを設けるため、隣地境界線側の元のレベルに幅50cmの土を残した状態で、土留め壁を設けた計画でした。

具体的なレベルの記載はありませんので、おおよその状況は下記のような状態です。

ドライエリア(±0)、隣地境界線付近の50cmの地面(+2.5m程度)、隣地レベル(±0)

つまり、不自然にわずかに地面が残っている状態です。

 

結果としては、周辺住民の訴え(審査請求)により、世田谷区の建築審査会は「違反は明らかと判断した。」となっております。

周辺住民の訴え内容

・からぼりの規模が大きいので、地盤面の算定基準はからぼりの底面とすべきだ。地盤面の算定が間違っているために、区斜面地条例が定める階数制限違反している。

指定確認検査機関の弁明

・からぼりの奥行きが4mなのは、東京都建築安全条例が求める大きさを確保したもので、旧日本建築主事会議が取りまとめた「高さ・階数の算定方法・同解説」に適合している。

審査会回答

・双方の言い分を聞いたうえで、安全条例19条の窓先空地の奥行は2mあれば適合する。からぼりの奥行きは4mまでは必要ない。(もしも残されている土留め擁壁が崩壊し地面が崩落した場合、復旧する際、元の形状に復旧することは常識に照らして不自然である。)よって、地盤面をドライエリアの底面で地盤面を算定した場合、区斜面地条例に違反するのは明らかである。

 

最終的な回答は、「常識的に」や「将来、不自然な地面が崩落した場合」など建築基準法関係規定などの条文に記載のないことが検討されたうえで判断されています。

最終的には、特定行政庁がさまざまな情報を踏まえて判断することになり、地域住民の想いなども勘案されることは、とても良いことだとも思います。

設計者も、法文を守れば何をやっても構わないというスタンスでは敵を作ってしまうのだろうと思われます。

建築基準法は、必要最低限の基準と法1条に記載されています。

建築士は、一般常識や周辺環境などの状況を勘案して計画する力が必要だとしみじみ思いました。