へむ丸ブログ

~建築に響く笛~

たぬきの森_安全条例認定処分の違法判決

世にもおそろしい話を記載していきます。

東京都新宿区の事例です。

裁判で判決が決定している内容であり、概要は下記のとおりです。

【案件の概要】

・長屋

・新築

・延べ面積 2,820.58m2

・鉄筋コンクリート

・地上3階、地下1階

 

確認済証は交付されていますが、安全条例4条について単純にはクリアしないため、認定を取得しています。

その認定処分が裁判によって、取り消されてしまいました。

その結果、認定に基づき確認済証が交付されているので、確認済証も取り消しになってしまいました。

 

そもそも安全条例4条3項の認定の基準は以下の内容となっています。

・建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、同条1項の規定は適用しない。と定められています。また、特別区の場合は、区長がその管理及び執行しています。

この認定については、安全条例4条には適合していないが、そのほかに条件を付加するなどの対応を行うことで、安全上支障ない計画にすることになりますが、その基準は定められておらず、いちゃもんをつけようと思えばつけられるものでもあります。

処分庁は、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認めるために下記の内容により総合的に判断したということです。

【判断材料】

・耐火建築物、長屋

・建築物と隣地境界線との間には幅員2m~4mの避難のための空地が設けられている。

・各住戸の出入り口と反対方向にバルコニーを設け、バルコニーに面して上記の避難空地が設けられている。

・本件は路地状敷地だが、有効幅員4mの道路上の通路、その終端部に消防活動空地が設けられ、建築物が道路に直接面するのと同様の避難及び通行が確保されている。

・各住戸から2方向避難が可能であり、安全に敷地内通路に避難可能。

・円滑に消防活動が行えるように消防水利(防火水槽)及び南北12m、東西6mの消防活動空地が設けられている。

・接道部分は道路と鈍角で接しており、緊急車両の進入が容易。

・消防署長の下記意見を踏まえて、安全に配慮している。

 ア)ドライエリア、メゾネット住戸のバルコニーに避難用タラップ、避難器具の設置

 イ)消防活動空地に面した開口部は、防火戸とする。

 ウ)建築物の外周に連結送水管の設置、周囲の消防活動に配慮させた。

これらの内容から、建築審査会は違法性はないと判断している。

 

感想としては、認定を取得するために、行政庁と協議して、消防とも協議をします。そのうえで、確認申請時には、その認定証を持って、その他の建築基準関係規定についても適合性を審査されます。

その確認済証が裁判でひっくり返されるというのは、耐えられないことだと想定されます。

そもそも、敷地周辺の方から裁判を起こされなければこのようなことにはならなかったのです。計画敷地の周囲の住民や敷地の所有者とは良好な関係を築くことが重要だと思い知らされます。

位置指定道路の廃止

位置指定道路については、法42条1項5号に規定されています。

道に関する基準として、令144条の4が設けられています。

申請については、規則9条、公告及び通知については規則10条に規定されています。

 

位置指定道路が設けられると、周囲の土地に影響を与えます。

具体的には、自分の土地の隣の敷地が道路になってしまったら、これまで隣地境界線だった敷地境界線が、道路境界線に変更されることになります。

隣地境界線が道路境界線に変更されると、これまでは隣地斜線が規定されていた部分に道路斜線が適用されるという変更が発生します。

その場合、既存の建築物は、既存不適格になるのか?というと、違反建築物になってしまうということです。

そのため、規則9条に、「・・・道路の敷地となる土地の所有者及び土地又はその土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者並びに当該道を令144条の4第1項及び第2項に規定する基準に適合するように管理する者の承諾書を添えて特定行政庁に提出するものとする。」とあります。

上記により、位置指定道路にすることにより、周囲の建築物が違反建築物にならないように配慮されているようです。

また、位置指定道路は、公告された後、法42条1項5号道路として活用できるものになります。

公告については、規則10条にありますが、下記の事項が広告されます。

一 指定道路の種類

二 指定の年月日

三 位置

四 指定道路の延長(長さ)及び幅員

 

位置指定道路が指定された場合に、その指定道路の影響により周囲の建築物が違反状態になってしまった場合、既存建築物ではなく、違反建築物になってしまうというのは驚きでした。

許可_認定_確認について

 建築確認申請などを行っていると指定確認検査機関に確認申請を提出するのに、特定行政庁に許可や認定を提出する必要があります。

 確認申請の性質を知るにあたって、許可_認定_確認については、言葉の定義を知っておく必要があります。

 具体的に記載していきます。

【許可】

 一般に制限又は禁止している事項について、特定の場合に法律の範囲内で解除することです。また、行政庁の裁量が働く行為になります。

【認定】

 一定の事実又は法律関係の存否を有権者に確認することとあります。

【確認】

 特定の事実又は法律上の判断を表示する羈束(きそく)行為(判断の自由はなく、それに従わなければならず、拘束されているという意味)を確認といいます。裁量の働く余地のない行為になります。

 

 建築確認については、平成10年に法改正により、建築確認が民間開放され、指定確認検査機関が設置可能となりました。

 そこで、「許可」「認定」は、特定行政庁の権限であり、民間開放はなされていないので、指定確認検査機関は裁量のない「確認」行為のみを行っているということです。

 

 許可や認定の申請を特定行政庁に行う場合は、ある程度の決まりはある場合が多いですが、その他の裁量のある判断をなされる場合も多いと思われます。

防火設備_告示仕様_平成12年告示第1360号_法改正

延焼のおそれのある部分に開口部がある場合は、防火設備を設ける必要があります。(法2条9号のニロ)

防火設備の仕様については、令109条、令109条の2に記載されています。

延焼のおそれのある部分と開口部とを遮る外壁、そで壁、塀などは、防火設備とみなすものとされています。

今回は、防火設備の仕様について、記載していきます。

防火設備の仕様には、告示仕様(平成12年告示第1360号)と個別認定仕様(EB-○○○○)とがあります。

告示仕様に該当しないものは、個別認定仕様を選択する必要があります。

告示仕様の種別が増加する法改正がなされています。

国土交通省のHPは下記のとおりです。

001517767.pdf (mlit.go.jp)

建築:建築基準法等に基づく告示の制定・改正について - 国土交通省 (mlit.go.jp)

 

具体的には、近年増設された枠防火設備は、はめごろし戸のみでしたが、今回の法改正で、「すべり出し窓」が追加されています。

注意すべきは、すべり出し窓は告示使用可能となりましたが、「内倒し窓や外倒し窓」は告示仕様では不可のため、個別認定仕様となります。

道路境界線と塀の越境

敷地境界線には基本的に、「道路境界線」と「隣地境界線」があります。

確認申請時には、敷地境界線には、道路境界線8.000 などと記載を求められることになると思われます。

今回は、道路境界線から塀が道路に越境することについて、記載していこうと思います。

まず、法44条に道路内の建築制限の記載があります。

法44条

建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は築造してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。

上記の内容から、道路に突き出して、建築物等を設けることはできません。

塀は、建築物なのか?については、法2条に記載されています。

法2条一号

建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

上記の建築物の定義から、塀は建築物であり、道路に越境することはできないということになっています。

特に隣地との共有の塀の場合は、近隣との関係が良好でないことなどの理由から、壊したり、部分的に削るなどができないことがあります。

塀の種別として、万年塀などの場合は部分的に取り除くことも困難です。

その場合は、完了検査時や特定行政庁のパトロールなどにより、指摘を受ける可能性がありますので、特定行政庁と十分に調整しておくことが重要です。

特定行政庁とのやりとりでうまくいくことは少ないですが、指定確認検査機関と調整しても無駄なことがほとんどです。

東京都建築安全条例10条の2_前面道路の幅員

東京都建築安全条例10条の2は、比較的規模の大きな自動車車庫を設ける場合に、自動車の出入口の道路幅員を確保しなければならないというものです。

その道路幅員は、4m、5m、6m、12m以上と記載されています。

今回は、具体的には、2項の内容について掘り下げていきます。

2項の内容は、下記のとおりです。

【2項】

2 前項の表に掲げる用途以外の用途に供する建築物に附属する自動車車庫又は自動車駐車場が、次のいずれかに該当する場合においては、同項の規定は、適用しない。

 自動車車庫又は自動車駐車場の用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以下の場合において、その敷地に設ける自動車の出入口が幅員四メートル以上の道路に面し、かつ、交通の安全上支障がないとき。
 自動車車庫又は自動車駐車場の用途に供する部分の床面積の合計が三百平方メートル以下の場合において、その敷地に設ける自動車の出入口が幅員五メートル以上の道路に面するとき。
 自動車車庫又は自動車駐車場の用途に供する部分の床面積の合計が四百平方メートル以下の場合において、その敷地に設ける自動車の出入口が幅員四メートル以上の道路に面し、かつ、その道路とその道路に沿つた敷地の一部とが幅員六メートル(当該床面積の合計が三百平方メートル以下のものの敷地にあつては、五メートル)以上の道路状をなし、当該道路状をなす部分が他の幅員六メートル(当該床面積の合計が三百平方メートル以下のものの敷地にあつては、五メートル)以上の道路に有効に通ずるとき。
上記の第一号については、原則法42条2項道路で有効幅員が2m未満の道路は不可となります。しかし、敷地内を道路状にして、かつ安全上必要な措置(カーブミラー等)を講じることで可能となる場合があります。
この場合は、知事の認定になります。
次に、第二号、第三号の場合です。
第三号は、幅員6m以上の道路又は道路状部分が含まれます。
第二号の幅員5m以上については、道路のみとなります。
この道路状部分については、第一号と同様に、敷地内部を部分的に道路状にすることで対応が可能ということになります。
第二号は、道路状にすることなく、幅員5m以上の道路に車両の出入口を設ける必要があるため、要注意です。

用途変更時の構造審査

法87条に用途変更について規定されています。

その中に法20条の構造耐力上の安全性は含まれていません。

それは、新築時において、建築物が適法で安全であることの検査が行われていることが前提だからです。

その後は、法8条より、建築主等が適切な維持管理を行っていることが想定されています。

実際に用途変更の確認申請を提出すると、構造図なども求められる場合があります。

建築基準法質疑応答集5P6980などでも構造の審査は形式的には不要と記載されています。

それではなぜ、用途変更の申請時に構造図の提出を求められるのか?

特定行政庁等の言い分としては、既存図と用途変更図を比較し、壁に開口部などを新たに設けたりしていないか?の確認のためということです。

確かに、既存の建築物に開口部などを設ける場合、新たに構造計算などの行うことが難しいでしょうから、耐力壁や梁などを傷つけないことは重要だと思われます。

 

それと当然のことですが、用途変更は荷重が重くなる変更は原則できません。