へむ丸ブログ

~建築に響く笛~

指定確認検査機関による確認・検査の違法に対する最高裁判決

かつて横浜市での最高裁判決をざっくりと記載していきます。

指定確認検査機関は、1998年に建築基準法改正によりこれまで確認・検査業務が民間に開放されました。

横浜市でマンション建設に対して、周辺住民が指定確認検査機関の確認処分の取り消し訴訟を起こしています。

(確認時の違法性、開発不要とした横浜市長の判断などが争点)

時間が経過し、指定確認検査機関が完了検査を終えてしまうと、行政訴訟法9条に基づく「訴えの利益」が消滅し、結果、この訴訟は却下されることになりました。

その後、住民が確認の違法に対する損害賠償の訴えを指定確認検査機関ではなく、横浜市に対して訴訟を起こしました。

その裁判は、最高裁まで行われ、結果下記のように判決が下っています。

最高裁2005年6月24日決定)

この指定確認検査機関は本件確認を横浜市の長である特定行政庁の監督下において行ったものである。本件の確認の取り消し訴訟を横浜市に対する損害賠償請求に変更することが相当であると認めることができる。

 

特定行政庁側は、民間の指定確認検査機関は、第三者に対する損害を補填する賠償保険契約を保険会社と結んでいるので、賠償能力上の不都合は生じないなどと主張されていましたが、上記のような判決が出ています。

 

確認・検査などを民間に開放した意味がないではないか、特定行政庁が再審査しなくてはならないなどの議論があるようですが、自治体の責任の重さは、最高裁の判決の結果によりはっきりしています。

 

建築基準法上の明確になっていないことなどは、やはり、特定行政庁に確認することは重要なことだと思います。

近年は、特定行政庁に聞いても、「指定確認検査機関に確認申請を提出するのであれば、そちらに聞いてください。」などと言われることが多発していますが、特定行政庁は、明確に回答することが、最終的にまわりまわって責任が特定行政庁に戻ってきてしまうのだから丁寧に対応すべきだと思われます。

最近は、特定行政庁が確認・検査をほとんど行っていないというのが現実です。

具体的には、指定確認検査機関による確認・検査が全体の90%以上です。

そのうえで、確認後や建築中や建築後の調査に力を入れているようです。

 

1988年以前に建築確認・検査を特定行政庁で行っていた経験豊富な方々は、定年後、民間の指定確認検査機関などで業務をしているため、現在の特定行政庁には、審査の経験が乏しい人材しかいないというのも現実のようです。